※過去に作成し下書きとして放置していた記事です。
ブログを再開したので掲載することにしました。
数年前の拙い文章ですが、お楽しみいただけると幸いです。
海外放浪を夢見たのは、ストリートパフォーマンス(音楽)で生活することが出来ると知った日から。
ヨーロッパではバスキング(ストリートパフォーマンス)が生計を立てられる一つの手段であるという。
起業を目的に情報収集としてwebサイトを漁っていた時に何処かの誰かのブログ記事が目につきました。
「スペインのバルセロナではバスキングが観光業として成り立っている」
というモノでした。
(ヨーロッパに来てから現地で聞いた話では、実際に盛んなのはイギリスとドイツっぽい。イタリアも…?)
そんなワケで、旅に出るにあたってバルセロナという街は一つの目的地でした。
基本的に観光に興味は無いですが、サグラダファミリアは唯一、生で観たいと思っていたし。
そして先週、僕はとうとうバルセロナに足を踏み入れた。
セントラルステーションに着いたバスから降りて、駅構内のマクドナルドで物価チェックをして外で煙草を吸った。
(ヨーロッパに来てからはマクドナルドのハンバーガーとコーヒーの値段でその土地の物価を調査してたんです。50円くらいの差があったりします)
「治安が悪いと聞いていたけど、なかなか良さそうな街ではないか。」
僕の第一印象はそんな感じでした。
「荷物も重いしバスキング場所を探すより、一先ず予約していたホステルを目指そう。」
地下鉄を使いホステルへと向かいました。
路線乗換の駅にて、エレベーターに乗った時です。
財布をスられました。
バスキングで得た硬貨の両替をしたばかりで、ホステルへの支払いもあった為に全ユーロがその財布に入っていました。
…いえ、今までそのような危険や怪しさを感じたことが無かったこともあり、気を抜いていたんだと思います。
全ユーロを一つの財布に入れていました。
路線変更の為だけにある、地上へは出られないエレベーターを降りてすぐ、身体の前方に斜め掛けしていたウエストポーチが開いていることに気づきました。
ポーチの中に財布は無く、サーっと血の気が引き心臓が激しく鼓動します。
「え?いつから開いてる?」
…さっき切符を買った後に確認した。
…電車の中では誰とも接近してない。
…今降りたエレベーターだ!!!
エレベーターには僕以外に3人が乗っていました。
・陽気な男(僕の気を逸らす係)
・アフリカ系の男(抜き取り係)
・ビジネスマン風の背の高い男(目隠し係)
振り返るとその3人はエレベーターから降りることなく、上階へ戻っていきます。
もう一度言います。
路線変更の為だけにある、地上へは出られないエレベーターです。
(B1階とB2階の行き来のみ)
僕は35kgはあるであろうキャリーケースを持ち階段を駆け上がりました。
「そもそも何故アイツらはエレベーターに乗ったんだ?
降りずに戻るなんて怪しさ満点じゃないか!」
エレベーターに乗っていた1分にも満たない間の記憶と急速な理解が確信として頭の中を駆け巡ります。
僕が上階に着いた頃、エレベーターも到着し、ドアが開いたところでした。
エレベーターまでは約15m。
陽気な男は僕の方へ歩いてきます。
ビジネスマン風の男は元来た方向(電車のホーム)へ颯爽と駆けていきます。
アフリカ系の男は一瞬立ち止まるが、エレベーター側の改札から出ていきました。
僕は叫びながら駆け寄り陽気な男を捕まえ叫びます。
「Hey! Do you have my wallet!?
Are you stealer!?
Where my wallet!?!?」
(おい!お前俺の財布持ってんだろ!?お前は泥棒か!?俺の財布はどこだ!?)
勢いで英語いろいろ間違ってる。
陽気な男は「what?」とトボけます。
彼ら3人はあくまで他人という姿勢でした。
僕は、「間違ってても構わない!逃してたまるか!」と
陽気な男の腕をギュッと掴んでいたので、彼は「確認しろよ」とばかりにバッグの中を僕に見せてきました。
コイツは持ってなさそうだ。しかし受け渡しがあったかもしれないと思い、見ないわけにはいきません。
やはりそこに僕の財布はありませんでした。
陽気な男は小踊りをしながら
「Crazy,Japanese crazy」と言い僕の後方の改札から出て行きます。
(メチャクチャ腹立ったけどそれどころじゃない)
改札を出てアフリカ系の男を追いかけるも見失いました。
(ここでキャリーケースが重いからといって放置すれば他の荷物も盗られていただろう)
地上へ出てるとは思いませんでしたが、右も左も分からない地下鉄の駅で僕の頭は混乱していました。
地上へ出るとそこは片側3車線ずつの大きな交差点、他の出口を目で追います。
そんなことしたところで、陽気な男の顔以外はしっかりと見れていません。
ましてや、常套手段として駅構内からは出ないのがセオリーだと言われています。
(あとから知った)
もうお手上げでした。
改札を出てしまった後なので持っていたチケットは無効に。
お金もありません。
……地下鉄にはもう乗れない。
とりあえず予約していたホステルへ向かって歩きました。
バルセロナは坂が多く、僕が予約していたホステルはグエル公園のそば。
なかなか急な上り坂が目の前に現れます。
約35kgを押し歩き、汗ダクでホステルに着きました。
支払いはキャッシュの予定でしたが、全てを奪われた後です。
スタッフにカタコト英語で事情を説明して、
「歌って稼いで払うから、待ってくれ」と。
スタッフは「明日いくらかでも支払ってね」と、僕に安堵の気持ちをくれました。
そこから警察署へ行き、被害届証明書?を作ってもらい(あんま意味ないけど)。
夜も更けたため、翌日のバスキングに向けて寝ました。
いつか見たブログの情報は古かったようで、バルセロナではグエル公園のみでしかバスキングが出来ないようです。
昼前から歌いに出ることにしました。
昨日マクドナルドでハンバーガーを食べて以来、水のみだったので、途中で食パンとジャムを買いに休憩しましたが、6、7時間は演奏し歌い続けていたのではないでしょうか?
ギター弦を押さえる指も痛いし、質素な食事で低血糖ぽい震えもある。
その上、ビックリするくらい反応がもらえなかった。
陽が長い夏のヨーロッパもさすがに薄暗くなり、人通りも激減した21時ごろ。
ションボリしつつも、少しでも支払う為にホステルへ戻ります。
するとどうでしょう。
ホステルオーナーから
「今すぐ全額支払うか、出来なければ出てってくれ!」
と…
3泊予約していました。
今日の稼ぎはギリギリ1泊分です。もちろん全部渡すつもりでいました。
『いや、昨日は少しでもって…』
「ダメだ!全額だ。これはビジネスなんだ!」
『いや、でも昨日財布スられて…』
「それは知っている。だが俺は君の友達ではない。」
『…………わかった。出ていく。』
既に泊まった1泊分の請求をしなかったのが彼なりの優しさだったのでしょう。
しかし、財布をスられた街の夜に放り出された僕はホステルの前から動けず、途方にくれました。
ホステルを離れるとWi-Fiも無い為、誰とも連絡が取れません。
ホステルの外で3時間ほど座りこんでいました。
(ソレに対して何も言わなかったのも彼の優しさだろう)
日本で朝が明ける頃、
友人が手を差し伸べてくれたので、無理を通してもらい、
ドイツのケルン行きバスチケットを買ってもらいました。
(状況をSNSにアップして可能な限り安い手段を探して助けを求めた)
そこまで心配することはなかったのでしょうが、その時の僕はバルセロナの全てが怖く見えていました。
ポケットに十徳ナイフを忍ばせ、
後ろを歩く人がいれば先に行かせ、
街灯のあるところを歩き、
真夜中1時間かけて、ホステルからバス停まで財布をスられた街を歩きました。
通り道だったのでサグラダファミリアだけでも観ておこうと立ち寄りましたよ。
しかし感動は得られませんでした。
日本から約1万500キロ離れた街にある、唯一観たかった建造物も気分が沈んでいてはよくわからないカタチをした岩でしかなかった。
翌朝、19時間かけてケルンへ。
そして全ての荷物を抱えたままメシ代と宿代を稼ぐ為にバスキングを始めたのでした。
追記:
冷静に振り返ってみると、エレベーター内でスリに気づかないで良かったと思ってます。
ウエストポーチには1つしかない連絡手段のiPhoneもパスポートも入っていました。
エレベーターという個室で3人組のスリに気付き逆らいでもして、バッグごと強奪されていたらもっと大変なことになっていたはずです。
今では財布だけで済んで良かったと思うようにしてます。
(もちろん思い出したらイライラしかないけれどもね!)
この長文につき合ってくれたアナタにスリリングだけど安全なドラマが在る日々を。